
「新しい東北」復興ビジネスコンテスト2016 KDDI 総合研究所賞の受賞記念として、株式会社 KDDI 総合研究所 守屋直文取締役フューチャーデザイン2部門長と弊社板橋の対談が行われ、その様子が新しい東北復興ビジネスコンテストのホームページに掲載されました!
以下、記念対談の様子を抜粋いたします。
「新しい東北」復興ビジネスコンテスト 2016 KDDI 総合研究所賞 記念対談
先般実施された「新しい東北」復興ビジネスコンテスト2016 において、株式会社ネッパスがKDDI総合研究所賞を受賞したことを記念して、平成 29 年 2 月 8 日、株式会社KDDI総合研究所 守屋直文取締役フューチャーデザイン2部門長と、株式会社ネッパス 板橋知春 代表取締役との間で対談が行われました。
受賞のポイント
守屋 ICTを活用して社会に貢献するビジネスモデルであり、また2020年に開催される東京五輪に向けて日本全体が観光分野に力を入れている中、ネッパス様の取組は非常にタイムリーであると感じました。KDDI もインバウンドを中心に観光事業の活性化に高い関心を持っていることもあり、ぜひとも応援したいと思い、企業賞に選定させていただきました。
板橋 ありがとうございます。受賞させていただき、非常に嬉しく思っています。
ICT×観光事業の取組
板橋 私は大学卒業後、地元仙台で銀行員をしていましたが、当時すでにシャッター商店街など地域の衰退が目立つようになっていました。そこで地域のお店を元気にしたいと思い、2010年10月にネッパスを立ち上げてクーポン共同購入サイトの運営を始めました。事業は順調だったのですが、半年後に東日本大震災が起き、なかなか再開できない飲食店も多く、クーポン事業を停止せざるをえなくなってしまいました。
守屋 なるほど。そういう経緯があったのですか。
板橋 今回受賞させていただいた取組は、観光情報をリアルタイムで提供するサービスです。情報があふれる現代社会において、本当に欲しい情報にアクセスするのは非常に難しい。 例えば地域のディープなところ、広告を出さない、あるいは 出せない小さなお店の情報も提供することで、東北に足を運ぶきっかけとなることを目指しています。ICTの先端テクノロジーでこれを実現したいですね。
守屋 観光庁の統計を見ると、訪日外国人のうち初めて日本に訪れた方は4割程度で、リピーターの方が多いようですね。さらに全体の約9%は10回以上日本に訪れているそうです。 何度も日本に訪れている方は旅行ガイドに掲載されているところだけでなく、新しい体験、 ここでしか味わえない体験を求めています。2020年に向けて日本を再訪する方はますます増えていくと思いますし、なかなかいいポイントを突いた事業だと感じました。
板橋 訪日外国人のうち、東北を訪れる方は1%にも満たないのが現状です。ただ、観光客は目的があればどこにでも行きますよね。先日も岩手県の大槌町、宮古市に行ってきました。仙台から車で4時間以上かかる、決して便利とは言えない地域ですが、他にはない風景や体験があり、東北の持つポテンシャルを再確認できました。このような東北の魅力を伝えていくことこそがネッパスのミッションだと思っています。復興支援やボランティアとしてだけでなく、地域に魅力を感じて東北を訪れる方が増えてほしいですね。
守屋 私が香港に駐在していた時の現地スタッフにも日本好きがいましたが、その人は日本人でもなかなか訪れない地域にも頻繁に訪れていました。外国人は我々が想像もしないところに魅力を感じていたりもしますよね。
板橋 そうですね。昨年、中国から私の知人が日本を訪れましたが、漆塗りや南部鉄器、半纏の染め体験など、日本の伝統工芸が非常に気に入ったようでした。ネッパスでは中国人スタッフを雇用するなど、外国人の視点もサービスに反映させています。
守屋 リリースはもう少し先とのことですが、どのようにこのサービスを広げていこうと考えていますか。
板橋 まずは民泊利用者からサービスを広げたいと考えています。
守屋 確かに民泊利用者は旅慣れた方や日本を何度も訪れている方が多いので、このサービスはピッタリでしょうね。最近は大手旅行代理店などでも地域独自の体験を紹介するサービスを展開していますが、どのように捉えていますか。
板橋 競合相手であるとも感じていますが、観光業界全体の競争力が高まっていくのでいい傾向だと考えています。我々は地域との密接な関係を持っており、それが大手にはない強みだと思います。大手との棲み分けを図り、しっかりとネッパスのプレゼンスを確立したいですね。
守屋 東北のディープなところまで大手は追えないでしょう。ぜひそこで強みを出していただきたいと思います。
ICT×観光事業の課題
守屋 貴社のサービスはICTを活用した先進的な取組ですが、技術的な課題はありますか。
板橋 AIの活用やビックデータの収集など課題は多いですが、目下の課題はいかに情報の鮮度を確保するかということです。世の中の情報は過去のものが多いので、リアルタイムの情報は入手しにくい。今回受賞させていただいたサービスはGPSの位置情報をもとに、周辺情報をリアルタイムで提供する仕組みです。
守屋 国籍やライフログからその人の興味関心を割り出し、それに合わせた情報を提供できるといいですよね。AIを活用することで利用者が望んでいることを先回りして提案する ようなサービスも可能になりますね。
板橋 多言語化、翻訳の自動化も課題です。現在は4か国語に対応していますが、今後はさらに8か国語にまで拡大する予定です。
守屋 KDDIでも多言語音声翻訳システムを活用したタクシー事業に取り組んでいます。一昨年から鳥 取県の観光タクシーで実証実験を始めましたが、昨年12月からはついに東京都内でも実証実験をスタートさせました。また、生体認証技術を使ってパスポートを提示することなくホテルのチェックインを可能とするプロジェクトも進めています。生体認証だけで様々なサービスを受けられるようになれば便利ですよね。これからも日本を訪れた外国人がよりスムーズに活動できるような技術を開発し、観光事業の活性化に貢献していきたいと考えています。
板橋 観光以外の地域課題も感じています。例えば地方には二次交通が少なく、それが観光活性化の障壁になっています。ライドシェアがひとつのソリューションになると思いますが、今回受賞させていただいたサービスをハブとして、将来的には様々な分野に発展さ せていきたいと考えています。
守屋 なるほど。周辺サービスとの連携し、地域コミュニティ全体で地域課題に向き合っていくことも必要かもしれないですね。
東北における観光活性化の将来像
板橋 私たちのミッションは、今回受賞したサービスをしっかりと成長させ、その取組を通して東北を、そして日本を元気にしていくことだと考えています。
守屋 壮大なビジョンですね。東北は観光資源が多い割にはなかなか観光客が訪れない。これから日本を訪れるリピーターが増え、東北を訪れる方も増えると思います。ぜひネッパス様にはキープレイヤーとして頑張っていただきたいです。
板橋 ありがとうございます。このサービスがプラットフォームになり、ゆくゆくはライドシェアや民泊などにも展開し、地域課題の解決につながればと思います。
守屋 KDDIもシェアリングエコノミーには注目していますが、ネッパス様のサービス単体ではなく、周辺サービスとの相乗効果が出てくると地域への波及効果も大きくなりますよね。
板橋 そうして得られたビックデータもまちづくりやインフラ分野への活用の可能性があると考えています。これから仙台空港での LCC拡大や釜石市でのラグビーW杯開催など、東北は大きなチャンスを迎えると思っています。
「新しい東北」としての産業復興について
板橋 地域に根ざし、密着したサービスを運営できることが東北の強みだと思います。震災前から徐々に薄れつつある「人と人とのつながり」をICTの先端テクノロジーを駆使して再構築し、地域コミュニティ全体が良くなる仕組みを作っていきたいと考えています。ICT と「人と人とのつながり」は遠いもののように感じる方もいるかもしれませんが、Uberのような顔の見えるサービスだと、互いのニーズのマッチングにも活用できますよね。
守屋 震災によって大きな被害を受けましたが、リスタートのきっかけであるとの見方もできると思います。ICTを活用して新たな価値を創造していけばそこに人が集まり、さらに面白いことが生まれるのではないでしょうか。
板橋 震災から6年が経ち、継続することの難しさも感じています。震災直後には様々なプロジェクトが立ち上がりましたが、徐々にその数は減りつつあります。「なりわい」として継続させていくことは非常に難しいです。
守屋 持続可能性は重要ですね。事業を続けていくためには仕掛けもそうですが、気持ちや志も大切です。
板橋 本当にそう思います。やめるのは簡単ですが、続けていくことは難しい。おっしゃる通り、やりきるためには志も大切だと感じています。私は今41歳ですが、これからも東北にしっかりコミットしていきたいと考えています。
守屋 本日お話させていただいて、板橋代表の強い志を感じました。観光からスタートして、地域コミュニティ全体に新たな価値をもたらす可能性を持つ取組だと思います。今後ともぜひ頑張ってください。期待しています。